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家族のチカラ

2011.03.20.03:13

今回、東北に行くことに、
僕の嫁は反対してました。

もともと、僕が2週間日本に滞在する予定で、
その間、せっかく休みをとってくれたのに、
また離れ離れになってしまうし、
現地の状況はよくわからないし、
何より、僕が被災地に入ってしまったら、連絡ができなくなってしまいます。

嫁の気持はよくわかるし、正直言って、正論です。

僕の意見はただ一つ、単に「じっとしてられない」だけ。

僕のことを心配してくれている訳だし、
寂しい思いをさせる訳だし、
こちらは何も言えません。

でも、そうは言いながら、
僕のためにヒートテックや登山の時にお湯を沸かすストーブ(コンロ)を買ってきてくれて、
応援してくれて、
僕の気持としては、ありがたい、が7割と申し訳ない、が3割。
とにかく、とっても大きな力をもらいました。

ということで、出かける前に、お礼を言っておかないと。

ありがとうございました。
なるべく早く帰ってきます。
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行ってきます

2011.03.19.13:27

今日でこの3月のバイトも終わり。
もともと、来週21日にタイに帰る予定でしたが、
今回の地震で、それどころではなくなりました。

超急性期には、自分の家族のこともあり、
当直のスケジュールもあり、で
東北には行けませんでしたが、
少しずつ、自分の周りの状況が落ち着いてきたので、
明日から、一週間ほど、東北に行くことにしました。

AMDAというNGOのメンバーとして行くのですが、
自分の仕事のため、皆さんとは別行動で、
明日、青森に飛行機で入って、のんびりゆっくり電車で南下しようと思ってます。
活動予定地は、岩手の大槌町。
ひょっとしたら宮城の南三陸町?

現地の情勢次第で、多少の変更はあるかもしれません。

震災直後から、
ある避難所には人も物も集まり、
ある避難所には、何にもない状況で、
その格差は激しいものがあるようです。
もう医者はいらない、モノだけ欲しい、という意見もありました。
その一方で、今でも、医療スタッフが足りないから派遣してほしい、
という意見も現地から入ってきています。
そもそもお互いに連絡が取りづらい状況なので、
場所によって支援に差がでるのは、しょうがない。
マスコミが入れるところは、注目を浴びて、ますます支援が入るし、
マスコミに取り上げられなかったら、誰にも知られないまま、
生活せねばなりません。
だから、一か所を見て、全部を知った気になるのは、非常に危険です。
効率のいい方法なんて、ありません。
片っ端から見て回るしかないのです。

だから、実際に現地に行って、見てきます。
僕にできることがあれば、やってきます。
別に、医者の仕事じゃなくても、がれきの撤去でも、灯油のポリ缶運びでも。
上層部に伝わらない、現場の状況を、少しでも改善できれば、と思います。

こどもの笑顔

2011.03.16.00:54

今日は、静岡や飛騨で地震があって、
いよいよフォッサマグナに沿って本州が折れ曲がって、日本が沈むのか、
なんて思わず考えてしまいました。

物理的に日本が沈まなくても、
今、静岡の地震によって新幹線や高速道路が不通となって
関東と中部、関西との連絡が断たれたら、
そのダメージは計り知れないものがあります。

なんて、暗いことばかりを考えてしまいがちですが、
そんな暗いことばかりのニュースの中で、
岩手県宮古市で、小学校が再開した、とのニュースが入ってきました。
全校生徒の2/3が登校できたみたいで、
もちろん、施設の一部は避難所として使われていますが、
そんな中、校庭で子どもたちが笑いながらはしゃいで騒いで、とする姿が
テレビの中に映し出されていました。

やっぱり、子どもたちに笑顔が戻るのは、
とってもうれしいですね。
思わず涙がでます。
見ず知らずの子どもでも、こんなにうれしくおもえるもんなんですね。

AMDAでいくつかの被災地を回って感じたことは、
まずは家族という一番基本の単位があって、
その上で、
大人には仕事、
子どもには学校、もしくは子どもたちの遊び場、
もちろん着る物や食べるもの、そして暮らす場所も大切ですが、
こういったものがないと、
人間、こころも身体も安定しないというか、健康にはなれません。
子どもは、家族に守られつつ、
同時に子ども同士で遊べる環境が必要です。
だから、とりあえず、学校をがんばって再開するのは、
別にこんな大変な時に勉強をしてほしいわけではなくて、
子ども同士でわいわい言いながら遊べる場ができた、という意味で、
とっても素晴らしいニュースだと思います。

子どもは感受性が強いから、
大人たちが辛い顔をすると、辛い顔をしますが、
逆に、子どもたちが笑顔で遊んでいると、
大人たちも癒されます。
子どもは、両親の子どもであると同時に、
社会全体、地域全体の子どもでもあります。

どんどん、こどもの笑顔がひろがってほしい、そんな気持ちでいっぱいです。

泥臭い仕事

2011.03.15.13:09

地震から4日が経ちました。

現地の状況は、詳しいことは分かりませんが、
良くなってるところもあれば、一向に良くならないところもあるようで、
ただ、地震当日から気になっているのは、
「ひどい所からは情報が来ない」
助けを求める声を出すことすらできない地域が、数多く残っていることです。

日本中から、多くの方が、現地に救援活動に入っています。
僕も、行ければ行きたいけど、
まずは自分の持ち場を守らねばなりません。
東京では、停電の影響で、電車が動かず、スタッフが病院に来れない、とのことで、
診療時間を維持することが困難な病院が多々あります。

途上国で医療活動をする際に、よく、
「目の前の患者一人を治したって、何百万と患者がいるんだから、意味がない」
と言われます。
でも、今回のような、途方もない規模の災害で、何ができるかというと、
目の前の患者さんを一人ずつ治療したり、励ましたり、支えあったり、と、
それだけです。
指揮系統をしっかりして、どの地域で診療活動を行うか、
重症の患者さんをどうするか、
ということは重要ですが、
効率の良さばかりを考えていると、
枝葉末節がぼろぼろと抜け落ちてしまって、支援の手が届かなくなる。
バケツリレーで消火するように、
一人ひとりができることは小さくても、
その支援の輪を広げていけば、大きなことができます。
エリート意識が強いと、こういった泥臭い活動が馬鹿にされがちですが、
多くの人が同じ方向を向けば、一番力強い活動になれると思います。

前線に立つ人、
中継地点で指揮を出す人、
後方から支援する人、
誰が偉いとかすごいとかではなくて、みんな、偉くてすごい。

立ちはだかる壁

2011.03.12.21:44

災害の被災地で、自分と自分の家族の無事を確認した後にすること

それは、周りを見渡して、助けを必要としている人がいないかどうか、確認すること。
そして、お互いに助け合って、多くの人の輪をつくること。

今回、幸いにも僕の家族も、アパートがある世田谷区も、
大きな被害はありませんでした。
だから、次は、実際に現地に入って、できることをしなきゃ。
別に義務でも何でもなくて、ただ、そうしたくてたまらない。

ただ、なかなかそうもいきません。
おそらく、日本中の人たちが、現地に行って何かしたいと思っているのではないでしょうか。
でも、自分の仕事をそう簡単に休むわけにはいかないのです。

僕も、以前お世話になったAMDAという団体の派遣メンバーとして、
明日の早朝、現地に向かおうとしたのですが、
残念ながら、僕の仕事の代わりをみつけることができず、断念しました。
交通機関が非常に制限された被災地では、
ある程度の人数がまとまって動く必要があり、
自分の仕事のスケジュールに合わせて働くことはできません。
ちょうど明日、何名かのスタッフが新潟経由で東北に向かうと聞き、
あちこちに電話をかけまくって、なんとかしようとしましたが、無理でした。

医療従事者は、今から一週間ぐらいが一番必要とされるのではないかと勝手に思っています。
災害の直後は、怪我などの患者さんが多く、
時間がたつに従って、病気の患者さんが増えていきますが、
基幹病院は最優先で復旧するので、時間がたってくると、
よそからの医者は必要ではなくなってきます。
今後、現地の状況がどのように推移するか分りませんが、
現地の医療スタッフが、地元の病院で働くことができない今が、
外部からのスタッフが必要になりそうです。

うー。悔しい。

あー、悔しい。

でも、気持ちを切り替えて、
できることをやっていくしかないです。

なんてこった

2011.03.11.21:24

実は、ブログではまだ書いていなかったのですが、
僕は、先週の土曜日に日本に帰ってきてました。
それは、単純にバイトをして生活費を稼ぐためだったので
主婦ならぬ主夫をしつつ、4日間で3日の当直なんぞしてました。

今日は、久々に仕事もなくて、
朝から一家のご飯を作り、ゴミを出し、
洗濯機をまわし、大掃除をしてました。

お昼過ぎに、近所の小さなアーケードのある商店街に買い物を行った時・・・

グラグラグラ!!

辛うじて立つことはできましたが、激しい揺れがオンボロアーケードに襲い掛かりました。

幸い、その場にいた人はみんな無事だったんですが、

はじめゆっくり横向きに揺れて、だんだん激しくなって縦に揺れて・・・・

そう、震源地はかなり遠くにありそう。

かなり遠くの地震で、こんだけ揺れるなんて!

おそらく、震源地はもっと大変なことになってるはず、とすぐに分りました。

そして、ラジオや携帯からのインターネットの情報をいくら調べても、
一向に震源地の情報が入ってきません。
ますます、いやな予感です。

関西人はみんな知ってますが、
阪神・淡路大震災の時、神戸の状況がわかったのは、
地震発生から半日ぐらい過ぎてからでした。
京都からの情報ばかり伝わったので、
多くの人が震源地は京都だと思ってました。

慌てて買い物を終わらせて家に走って帰り、
被害の状況を確認。
本棚の本や花瓶、それに食器なんかは散乱してましたが、
火事にはなっておらず、窓ガラスも割れておらず、たいした被害ではありません。

息子は学校に行ってるから、このオンボロアパートよりは無事なはずですが、
やっぱり心配です。
度重なる余震が、さらに不安を増幅させます。

とりあえずパソコンを立ち上げて情報を集めつつ、
息子の帰りを待ちます。
その間に、風呂桶に水をためて、断水に備えます。

息子は、「防空頭巾」をかぶって(今の世にこんなものがあったんだ!!)
無事に帰ってきました。

ふ~っ

嫁さんも、仕事場からメールをだしてくれて、無事に働いているらしい。
良かった良かった。

ガスが使えないので、あわててスーパーにお惣菜や冷凍食品
そして僕の主食、カロリーメイトなんかを買いに行き
(日本は水道水がそのまま飲めるのが、本当にありがたい)
メールとスカイプでみんなと連絡をとって、安否を確認。

嫁は、電車が止まってるから次の勤務の人がなかなか来れず、
ようやく夜の8時に仕事から解放されたらしく、
電車が止まってるから数時間かけて歩いて帰ってくるらしい。

しょうがないから、ティファールでお湯を沸かして、味噌汁を作り、
息子と二人で晩御飯を食べて、
怖がる息子を寝かして、今に至ります。

全くの偶然でしたが、日本にいれて、良かった。
こんな時は、そばにいることが、一番大事です。
特に、携帯も通じない、連絡がとれない状況下では、
声の届く範囲にいることが重要。

地震が起きたことは本当に残念ですが、
僕を日本に帰してくれていた、自分の運命には感謝です。

本当は3.21にタイに帰る予定でしたが、
多摩にある病院での勤務が終わったら、そのまま東北に行って、
できることがあれば、ぜひやりたい。
極寒の中、水も電気も暖房もなく、避難している人たち。
今すぐ行って何かをしたいけど、残念ながら物理的にそれはできません。
また、自分のやるべき仕事がどうしても優先になります。
でも、それが終わったら、おそらく来週か再来週になると思いますが、
長期にわたって避難している人たちに、何かできることがあるなら、
ぜひその「何か」をしてきたいと思います。

こころを支える人たち

2011.03.10.02:37

2月の後半から、いろいろ複雑な背景の患者さんや事件などが続きました。
今日は、こどもたちの「こころの問題」に携わっている、
カウンセリングの方を紹介します。

R1012346.jpg

この方は、Aung Myint(アウン・ミン)先生といって、
ビルマ人の臨床心理士です。
オーストラリアの大学で博士号をとり、今でも研究を行いつつ、
メータオクリニックで、実際に患者さんを目の前にして、
さまざまな問題に取り組んでいます。

こころの問題というのは、
患者さんと直接コミュニケーションが取れることが大事ですが、
それだけでなく、
患者さんの文化・宗教・風俗的な背景をちゃんと理解していることが重要です。
私たちだって、何にも日本のことをしらない外人に、
すべてを打ち明けて話そう、だなんて思わないですよね。
自分の思っていること、悩んでいることを分かってくれる、と患者さんが思わない事には、
なにも始まりません。

そして、心理学の分野では、
西洋的な問題のとらえ方、解決方法と、
東洋的な問題のとらえ方、解決方法があるそうです。
西洋的な問題のとらえ方では、「analyze」つまり一つの問題を
なるべく細かいパーツに分解していき、本質を捉えようとしますが、
(ちょうど顕微鏡で物を視るようなやり方ですね)
東洋的な問題のとらえ方、解決のしかたでは、
いろんな要素を統合して、大きな眼で物事を見渡そうとします。
まさに「和をもって尊しとなす」ような考え方です。

やっぱり、アジア人の精神、心理的な問題は、
アジア的、東洋的なものの見方をある程度していかないと、
どうもしっくりこないんですよね~。
そんな僕の漠然とした思いを、生涯の研究テーマとして、
そして、その成果を自分の国の難民たちのために使っている、
とても尊敬できる人です。
僕は、児童心理、児童精神の領域の知識はほとんどないので、
というか心理学自体、ほとんど分からないので、
少しでも多くの知識や考え方、応用力を
彼から習おう、と思っています。

誰も守ってくれない

2011.03.07.19:14

先日、日本で、幼児が犠牲になった痛ましい事件がありましたが、

メソットでも、痛ましい事件はしばしば、というより、頻繁に、あります。

この地に住む多くの人たちは、
ビルマから逃れてきた「不法滞在」の難民・移民であり、
(一応「難民」の定義はありますが、話がどうでもいいところでややこしくなるので、
僕はあまり難民と移民の区別はしません)
そして、もともと、ビルマの軍事政権からも
身分を証明する書類など発行されていない人も多く、
そうなると、ビルマにいても、タイにいても、戸籍がありません。
戸籍がない親から生まれた子供にも、
もちろん戸籍はありません。
また、戦災孤児やエイズ孤児も多数存在しています。
そのような子どもたちがいつ、どこで生まれて、なんて言う名前なのか、
誰も知りません。

戸籍がないとどうなるのか・・・

税金を払わなくて済む・・・ではなくて、
その人が、政府に国民として管理されていないことを意味します。
すると、医療や教育などのサービスを受けられなくなるのは勿論ですが、
そもそも政府にとっては「存在していない」人なので、
殺されようが、
売り飛ばされようが、
奴隷として扱われようが、
役人や警察の関知するところではありません。
存在していない人、どころか、
野良犬や野良猫、あるいはそれ以下の存在でしかないのです。
タイのバンコクやチェンマイなどの都市部には、
多くの貧しい少数民族や難民の子どもや女性達がが売り飛ばされて、
自由のない奴隷のような生活を送っています。

先月の終わり、ある西洋人の夫婦が僕に相談してきました。
メソットに住む、中年の西洋人の女性が、一人の孤児を育てている。
それだけなら、感動的なストーリーになったかもしれませんが、
その子どもは、2歳近くなのに、手足はガリガリで、おなかはふくらみ、
絵にかいたような栄養失調で、
発達も遅れ、何より、感情をほとんど表に出しません。
その女性は自称精神科医で、その人が語るには、
専門外ではあるが、この子はセリアック病というまれなおなかの病気で、
そのせいでこんだけ痩せてしまっているが、
私が頑張って診断して、食事療法を始めてからは、どんどん元気になってきた、と。

でも、昔の写真と比べても、決して状態が良くなっているようには思えません。
何より、その女性以外、誰一人、この子の健康状態をチェックしている人がいません。
そもそも、ビルマの食事を普通に食べる限りは、
セリアック病という病気は全く問題にはならないはずです。
(麦を主食とする欧米で問題になる病気で、麦さえ食べなければ、本来、問題はありません)
現在のところ、ほとんど診察も検査もできていないので、
この子の栄養障害の原因は不明ですが、単なる食事不足かもしれません。
いずれにしても、この女性は、第三者からのチェックを頑なに拒みます。

傍目には、その女性の精神状態が病的としか思えないのですが、
この孤児には、当然名前も戸籍もなく、
この欧米人の女性がこの子をかくまって、医療機関に受診させなくても、
ここではそれが犯罪にならないのです。
(このようなケースは、日本でも、犯罪となるかどうか、微妙かもしれませんが)

現在、何とかこの子に第三者の目が入るように、
そして、栄養状態が少しでも改善するように、
子どもの保護を行う団体やメータオクリニックのカウンセリングチーム、
そして僕も含めた医師や臨床心理士などが連携しながら、
少しずつ、できることを進めています。

日本でも他の先進国でも、何かあると、すぐに政府のせいにしたり、
政府の無能ぶりを嘆くのがお約束ですが、
全く政府がない、あるいはそれに代わる自治組織も機能しない、
そんなところに来てみると、
日本のありがたさが身にしみてわかります。

御報告

2011.03.02.17:44

先日ご紹介した、白血病疑いの男の子は、
チェンマイという都会の病院で検査を受けた結果、
やっぱり白血病でした。
で、すぐさま、治療を開始することができました。

別に自分が何をしたわけではありませんが、
二つ目の難関もクリアできたわけで、うれしくてたまりません。

このブログを読んで、応援してくださった方もおられて、
そういった、みんなの願いがつながり、この子に届いて、
そして、今、この子が治療を受けられているんじゃないか、と思えてなりません。

そして、もし、いくらかでも、
お金の面でご支援してくださる方がおられましたら、
ぜひ、自分までご連絡をお願いいたします。
直ちに、こちらから連絡させて頂きます。

金集めのためにブログを始めたわけではないので、
もし、気分を害された方がおられましたら、お詫びいたします。
誰かに「強制」させてしまうのは、全く僕の本意ではないので、
そのように感じてしまわれた方がおられましたら、ご連絡ください。

とにかく、今は、
このつかまえた幸運を最大限に生かせるように、がんばっていきたいと思います。

こころの闇を灯す言葉

2011.03.01.00:22

先々週の土曜日に、一人の女の子がお父さんに連れられてやってきました。
お父さんいわく、急にしゃべらなくなった、行動がおかしくなった、とのこと。
確かに、意思の疎通はできそうになく、意味もなく暴れてるような状態です。
そして、この子の母親も、姉も、同じ症状だと。兄は、大丈夫らしい。

R1012222.jpg
R1012228.jpg

こう聞いて、はじめは、何かの遺伝性の神経の病気なのか
(女の子だけに発症、というのはあまりありませんが)、
あるいは何かの中毒か
(この地域では、土壌に鉛が多いのか、鉛中毒の患者が非常に多く、
急性の鉛中毒で、神経に異常をきたすことがあります。)
などと考えましたが、
診察をしていると、どうも反応がおかしい。
単純に意識の状態が低下しているときの反応ではなく、
どうもこちらの反応を伺いながら、行動をしているような感じで、
精神的なものからくる発作のような感じです。
そして、何かに脅えている様子。

お父さんに話を聞くと、
一人で留守中に家の中にビルマ軍の兵隊たちが入ってきて、
本人は驚いて家から飛び出して森の中に逃げ込んでいた、とのこと。

ところが、おかしなことに、
この女の子は決してお父さんに近づこうとはせず、
他の男性に、助けを求めるかのように近寄って、スキンシップを求めます。

真っ先に思い浮かぶのは、
この女の子に対して、お父さんかお兄さんが、
何か精神的に傷つくようなことをしたんじゃないか、ということ。

いきなり、お父さんを悪者にして、親子別々に入院させる、というのが
理想なのかもしれませんが、ここでは、入院患者の面倒は家族が見るのが決まりなので、
止む無く、誰も使っていない隔離病棟の一室に、親子だけで寝泊まりさせて、
しばらく様子をみることにしました。

カウンセリングの人たちが、何度も何度も一日数回、病室まで足を運んで、
時には、絵を描かせたりおもちゃで遊ばせたりしながら、
少しずつ女の子の心が落ち着くのを待ちました。

そうしたら、先週の金曜日、ちょうど一週間ほど経ったとき、
ようやく、笑顔が頻繁にでるようになり、
そして、自分の名前から始まって、家族の名前が言えるようになりました。
思わず、こちらもうれしくてうれしくて、思わずガッツポーズ!!

やはり、というべきか、残念、と言うべきか、困ったことに、この女の子は、家族みんなのことが嫌いなんだそうです。
特に、お父さんやお兄さんとは一緒にいたくない、と。
早く家には帰りたいけど、一緒に暮らすのがいや、ともいいました。

そして、お父さんの話は、
兵隊ではなく、村人が入ってきた、とか、
村の中に見知らぬビルマ人の一団が工事か何かのためにやってきて
(この子はカレン族という民族の女の子で、ビルマ人とは民族が違うため、会話もできません。)
それで怖くて森の中に逃げた、とか
話を訊ねる度に、話の内容が二転三転。

どんなにお父さんによる虐待が疑われても、お父さんにこの子は養ってもらっているんですよね。
だから、お父さんと一緒に暮らすしかない。

本人とお父さんに、何度も話しかけてみて、
少しずつ、この子も、お父さんも、少しずつ、からまった過去の記憶を整理して
早く、幸福な家庭生活ができるように、いのります。
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♥. ♠. ♣Alice
プロフィール

ハマダラカ

Author:ハマダラカ
職業:元小児科医、現在なんでも屋的医師を目指して修行中
日本を、そして海外を、自由に移動しては、
働いたり遊んだりの、
自称フリーター医師。
しばらくタイにあるビルマ難民向け病院でボランティアしてましたが
現在岩手県の被災地にある病院に来ました
関西人のつもりですが、心のふるさとは北九州市
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Toru Yoneda

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