誰も守ってくれない
2011.03.07.19:14
先日、日本で、幼児が犠牲になった痛ましい事件がありましたが、
メソットでも、痛ましい事件はしばしば、というより、頻繁に、あります。
この地に住む多くの人たちは、
ビルマから逃れてきた「不法滞在」の難民・移民であり、
(一応「難民」の定義はありますが、話がどうでもいいところでややこしくなるので、
僕はあまり難民と移民の区別はしません)
そして、もともと、ビルマの軍事政権からも
身分を証明する書類など発行されていない人も多く、
そうなると、ビルマにいても、タイにいても、戸籍がありません。
戸籍がない親から生まれた子供にも、
もちろん戸籍はありません。
また、戦災孤児やエイズ孤児も多数存在しています。
そのような子どもたちがいつ、どこで生まれて、なんて言う名前なのか、
誰も知りません。
戸籍がないとどうなるのか・・・
税金を払わなくて済む・・・ではなくて、
その人が、政府に国民として管理されていないことを意味します。
すると、医療や教育などのサービスを受けられなくなるのは勿論ですが、
そもそも政府にとっては「存在していない」人なので、
殺されようが、
売り飛ばされようが、
奴隷として扱われようが、
役人や警察の関知するところではありません。
存在していない人、どころか、
野良犬や野良猫、あるいはそれ以下の存在でしかないのです。
タイのバンコクやチェンマイなどの都市部には、
多くの貧しい少数民族や難民の子どもや女性達がが売り飛ばされて、
自由のない奴隷のような生活を送っています。
先月の終わり、ある西洋人の夫婦が僕に相談してきました。
メソットに住む、中年の西洋人の女性が、一人の孤児を育てている。
それだけなら、感動的なストーリーになったかもしれませんが、
その子どもは、2歳近くなのに、手足はガリガリで、おなかはふくらみ、
絵にかいたような栄養失調で、
発達も遅れ、何より、感情をほとんど表に出しません。
その女性は自称精神科医で、その人が語るには、
専門外ではあるが、この子はセリアック病というまれなおなかの病気で、
そのせいでこんだけ痩せてしまっているが、
私が頑張って診断して、食事療法を始めてからは、どんどん元気になってきた、と。
でも、昔の写真と比べても、決して状態が良くなっているようには思えません。
何より、その女性以外、誰一人、この子の健康状態をチェックしている人がいません。
そもそも、ビルマの食事を普通に食べる限りは、
セリアック病という病気は全く問題にはならないはずです。
(麦を主食とする欧米で問題になる病気で、麦さえ食べなければ、本来、問題はありません)
現在のところ、ほとんど診察も検査もできていないので、
この子の栄養障害の原因は不明ですが、単なる食事不足かもしれません。
いずれにしても、この女性は、第三者からのチェックを頑なに拒みます。
傍目には、その女性の精神状態が病的としか思えないのですが、
この孤児には、当然名前も戸籍もなく、
この欧米人の女性がこの子をかくまって、医療機関に受診させなくても、
ここではそれが犯罪にならないのです。
(このようなケースは、日本でも、犯罪となるかどうか、微妙かもしれませんが)
現在、何とかこの子に第三者の目が入るように、
そして、栄養状態が少しでも改善するように、
子どもの保護を行う団体やメータオクリニックのカウンセリングチーム、
そして僕も含めた医師や臨床心理士などが連携しながら、
少しずつ、できることを進めています。
日本でも他の先進国でも、何かあると、すぐに政府のせいにしたり、
政府の無能ぶりを嘆くのがお約束ですが、
全く政府がない、あるいはそれに代わる自治組織も機能しない、
そんなところに来てみると、
日本のありがたさが身にしみてわかります。
メソットでも、痛ましい事件はしばしば、というより、頻繁に、あります。
この地に住む多くの人たちは、
ビルマから逃れてきた「不法滞在」の難民・移民であり、
(一応「難民」の定義はありますが、話がどうでもいいところでややこしくなるので、
僕はあまり難民と移民の区別はしません)
そして、もともと、ビルマの軍事政権からも
身分を証明する書類など発行されていない人も多く、
そうなると、ビルマにいても、タイにいても、戸籍がありません。
戸籍がない親から生まれた子供にも、
もちろん戸籍はありません。
また、戦災孤児やエイズ孤児も多数存在しています。
そのような子どもたちがいつ、どこで生まれて、なんて言う名前なのか、
誰も知りません。
戸籍がないとどうなるのか・・・
税金を払わなくて済む・・・ではなくて、
その人が、政府に国民として管理されていないことを意味します。
すると、医療や教育などのサービスを受けられなくなるのは勿論ですが、
そもそも政府にとっては「存在していない」人なので、
殺されようが、
売り飛ばされようが、
奴隷として扱われようが、
役人や警察の関知するところではありません。
存在していない人、どころか、
野良犬や野良猫、あるいはそれ以下の存在でしかないのです。
タイのバンコクやチェンマイなどの都市部には、
多くの貧しい少数民族や難民の子どもや女性達がが売り飛ばされて、
自由のない奴隷のような生活を送っています。
先月の終わり、ある西洋人の夫婦が僕に相談してきました。
メソットに住む、中年の西洋人の女性が、一人の孤児を育てている。
それだけなら、感動的なストーリーになったかもしれませんが、
その子どもは、2歳近くなのに、手足はガリガリで、おなかはふくらみ、
絵にかいたような栄養失調で、
発達も遅れ、何より、感情をほとんど表に出しません。
その女性は自称精神科医で、その人が語るには、
専門外ではあるが、この子はセリアック病というまれなおなかの病気で、
そのせいでこんだけ痩せてしまっているが、
私が頑張って診断して、食事療法を始めてからは、どんどん元気になってきた、と。
でも、昔の写真と比べても、決して状態が良くなっているようには思えません。
何より、その女性以外、誰一人、この子の健康状態をチェックしている人がいません。
そもそも、ビルマの食事を普通に食べる限りは、
セリアック病という病気は全く問題にはならないはずです。
(麦を主食とする欧米で問題になる病気で、麦さえ食べなければ、本来、問題はありません)
現在のところ、ほとんど診察も検査もできていないので、
この子の栄養障害の原因は不明ですが、単なる食事不足かもしれません。
いずれにしても、この女性は、第三者からのチェックを頑なに拒みます。
傍目には、その女性の精神状態が病的としか思えないのですが、
この孤児には、当然名前も戸籍もなく、
この欧米人の女性がこの子をかくまって、医療機関に受診させなくても、
ここではそれが犯罪にならないのです。
(このようなケースは、日本でも、犯罪となるかどうか、微妙かもしれませんが)
現在、何とかこの子に第三者の目が入るように、
そして、栄養状態が少しでも改善するように、
子どもの保護を行う団体やメータオクリニックのカウンセリングチーム、
そして僕も含めた医師や臨床心理士などが連携しながら、
少しずつ、できることを進めています。
日本でも他の先進国でも、何かあると、すぐに政府のせいにしたり、
政府の無能ぶりを嘆くのがお約束ですが、
全く政府がない、あるいはそれに代わる自治組織も機能しない、
そんなところに来てみると、
日本のありがたさが身にしみてわかります。
スポンサーサイト